
- 米国研修で出会ったロジカル・シンキングが私を変えた
- ロジカル・シンキングは時代の要請だった
- ワークショップはロジカル・シンキングを使う試行プロセスの場だ
- ビジネスワークショップは「選択と集中」が必要
- 大局観を養うのに最適なシステム思考
- ファシリテーションのコア・スキルとしてのシステム思考
米国研修で出会ったロジカル・シンキングが私を変えた
私は今から約5年前、唯一「これだっ」と思える論理的思考方法に巡り合うことができました。それが、システムズ・シンキング、すなわち「システム思考」です。
私は35歳の時に、石油会社からビッグ5と呼ばれる、会計事務所系の外資系コンサルティング会社、アーサーアンダーセンに転職しました。
一般事業会社からの初めての転職で、35歳という年齢は、まさにギリギリのタイミングでした。
これといった特殊技能も持たない普通の事務系サラリーマンだった35歳の私は、文字通り決死の覚悟でコンサルティング業界に飛び込んだのでした。
入社した時の私のタイトルは、シニアコンサルタントでした。
そのコンサルティング会社では、コンサルタント、シニアコンサルタント、マネージャー、シニアマネージャ、ディレクターの順番で、階層構造ができていました。
シニアコンサルタントは、大学卒業してすぐコンサルティング会社に入社したプロパー社員であれば、4年目でなれるポジションでした。
会社には、すでに29歳でプロジェクトを取り仕切るマネージャーがいました。
私は入社当初は、エネルギー業界関連のプロジェクトに入り、石油業界で身につけた業界知識だけを頼りにガムシャラに仕事をしていましたが、すぐに限界を感じました。
それは、業界知識だけでは、とても太刀打ちできないことに気づいたからです。
やはり、コンサルタントである以上、普遍性のあるコンサルティング・スキルを習得しない限り、個別のプロジェクト案件の課題を解決できない、とその時悟ったのです。
コンサルタントになって、1年たち、ようやくマネージャーに昇進し、すぐに米国シカゴで新任マネージャー研修に参加しました。
新任マネージャー研修の前に、選択式の単科コースが複数用意されており、Systems Thinkingというコースを選択した。
このコースのために、MIT(マサチューセッツ工科大学)からインストラクター1名が派遣され、2日間にわたり、研修が行われました。
この時に出会った「システム思考」という論理的思考法が、私のビジネス人生を変えたのです。
帰国してから、このシステム思考をコンサルティングの現場で活用しようと思い、途中で、同僚のコンサルタントと一緒に共同研究を始めるまで、システム思考を独学で勉強を続けました。
ロジカル・シンキングは時代の要請だった
ここ数年のビジネス書の傾向をみていて、ハタと気がつきました。
1997年からのロジカル・シンキングブーム
2001年からのビジネス・コーチングブーム
2002年の図解ブーム
日本のビジネスパーソンは、以前からかなりの勉強をしてきています。
私が石油会社のサラリーマン時代には、特に米国企業に繁栄をもたらした業務変革について知りたくて、毎月の小遣いからビジネス書を買って読んでいました。
日本企業には、優秀な人材が多く、普段から最先端の経営手法について勉強している人がたくさんいます。
ロジカル・シンキングブームは、ビジネスパーソンが問題解決力を身につけたがっていることの証明です。
先行き不透明な今日、頼れるのは自分だけです。
皆、どうやって自分のキャリアを向上させるか、商品価値を上げるかに腐心しています。
ロジカル・シンキングが身につけば、例え、会社を変わっても、応用力がきくので、なんとかやっていけるのではないか、と考えているのです。
ワークショップはロジカル・シンキングを使う試行プロセスの場だ
また、図解ブームは、ビジネスパーソンのスキル向上を意味しています。
私が一般企業で働いていた当時は、パワーポイントを使いこなせる社員はごくわずかでした。
パワーポイントは、コンサルタントのような一部の職業でしか、使われていませんでした。それが今では、一般企業の営業マンが、当たり前のように、パワーポイントを使って、提案書やプレゼンテーション資料を難なく作成しているのです。
確かに日本のビジネスパーソンのスキルは、個人レベルでは、かなり進化してきています。しかし、せっかく努力して学んだロジカル・シンキングや図解力を、個人の限られた職務だけに活用するのは、非常に勿体ないと思うのです。
私はロジカル・シンキングや図解といった普遍的スキルへの関心の高まりは、単なる偶然ではない、と考えています。
そして、今後はロジカル・シンキングや図解力をアウトプットする機会を意識的に用意することが、企業の活性化にもつながると考えています。
ロジカル・シンキングや図解の次に注目されるのが、2つのスキルをアウトプットするのに最適なワークショップだと考えているのです。
ビジネスワークショップは「選択と集中」が必要
ワークショップは、プロジェクトチ−ムがあらかじめ周到に準備し、全ての労力を集め、目標を討つ(合意形成を得る)という点で、プロジェクト管理における「選択と集中の場面」と言えます。
なぜならワークショップのノウハウは、限られた手勢(プロジェクトチーム)で、複数の部門からの参加者に、プロジェクトの意義を納得させ、協力を仰ぐための戦術そのものだからです。
しかし、その重要性を知りながら、合意形成や課題発見の思考プロセスとしてのノウハウが培われていないのが今日の日本のビジネス界の現実です。
こうした思考プロセスは、複数の人間が集まり、アウトプットすることで発展していく。
個人のアウトプットなど、所詮、たかが知れています。
だが、組織として優れたアウトプットを生み出すには、時間がかかります。
そこで、思考プロセスでの試行錯誤がどうしても必要になります。
精神科医であり、作家の和田秀樹氏は、ビジネスでは考えたらすぐに行動に移すことが重要で、もしダメならば、何度でもやり直しながら前に進むことの重要性を「試行力」という言葉で表現しています。
ワークショップは、まさに企業の試行力を高める場なのです。
知識社会では、商品・サービスに高い付加価値が要求されています。
もはや、「工業化社会型の会議の進め方」では、もはや通用しなくなっているのです。
従来の定例会議がラジオ体操だとすれば、知識社会のワークショップはK1といってもよいでしょう。
つまり、「スピード」と「試行」を必要とする知識社会のビジネスに、いままでの会議体が追いついていないのが実情なのです。
大局観を養うのに最適なシステム思考
システム思考とは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のピーター・M・センゲ教授が創案した論理的思考法のことです。
日本では、「最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か」(ピーター・M・センゲ著徳間書店刊)が出版されています。
「システム思考とは何か」を一言でいえば、「ある問題の背景にある根本的原因を探すために、問題を起こしている構成要素どうしの因果関係を把握する方法」といえます。言い換えれば、空を飛ぶ鳥になったつもりで、上空から地上を眺めるように広い視野を持ち、物事を構成する要因の一つ一つを個別に見るのではなく、全体を大局的にとらえ、理解することをいいます。
ワークショップにおけるシステム思考の活用メリットは次の通りです。
- 経営上の課題を大局的に眺める習慣が身につく
- 課題を体系的に整理する手法が身につく
- 複雑な課題を構成する要因間の因果関係が容易に把握できる
- 問題解決のための真の重要成功要因を見出す能力を養える
- ワークショップで活用する場合、参加者の首尾一貫したロジックに基き、課題の理解と重要成功要因を特定していくので、参加者が納得のいく結論を導き出すのに効果的である
私はコンサルタントになる前の石油会社では、本社の企画スタッフとして働いていました。
役職ではありませんでしたが、国内・海外の支店に号令をかける実質的な「権力」をふるう立場にあり、自分ではビジネスパーソンとして、全体を把握する能力をある程度身につけている、と思っていました。
しかし、システム思考を学んでからは、自分の全体把握力は、かなりいい加減であったことに気がつきました
実は、システム思考は、図解思考でもあるのです。
因果関係を構成する各要素どうしを矢印でつないで表現するのです。
因果関係図をもとに説明すれば、送り手のいいたいことが受け手にわかります。
先述の米国研修でシステム思考のコースに参加したとき、最初にインストラクターが、たたみ2畳分はありそうな因果関係図を広げて見せてくれました。
それは米国のあるハイテク企業の経営陣が、意思決定の検討材料として作成した、巨大な因果関係図でした
「なんじゃ、こりゃぁ。米国企業のトップは、こんなものを使って議論し、意思決定しているのか。」
私はこの大きな因果関係図を見て圧倒されました。
同時に、これでは日本企業は欧米企業に勝てないな、と思ったのです。
インテル、GMといった、米国のトップ企業では、経営の意思決定に、システム思考を活用している、といわれています。
この米国研修での体験から、私はシステム思考を、コンサルタントに限らず、一般のビジネス・パ−ソンにも学んで損はない、と思うようになりました。
ファシリテーションのコア・スキルとしてのシステム思考
ワークショップには、リード役として、ファシリテーターが必要です。
英語の「Facilitation」は、「促進する、円滑にする、容易にする」という意味です。
ファシリテーションとは、複数の参加者から様々な意見を引き出し、その前提にあるものを浮かび上がらせて参加者に共有させ、それらに基づいて、新たな知恵や、アイデア、方向性を創造する技術のことです。
ファシリテーターは、単なる“会議の進行役”ではなく、多様なメンバーの思考を効果的に活かしながら成果を出す技術であり、これからのビジネスリーダーに必須の能力として注目を浴びています。
米国では、役員会等の重要な意思決定を要するミーティングで、ファシリテーターの存在は欠かせない、と言われています。
出席者が持論を活発に話し合うための効果的な相互作用をサポートするために、プロのファシリテーター(プロセスコンサルタント)を雇うのです。
日本でも、企業内の経営課題に直結した業務がプロジェクト単位で推進されるようになり、ワークショップにおけるファシリテーターの役割の重要性が徐々に認識されるようになりつつあります。
システム導入に限らず、あらゆるプロジェクトでは、このファシリテーション能力を効果的に発揮することで、プロジェクト関係者の合意形成、ビジョン形成ができるようになります。
ファシリテーターに要求される能力として、コミュニケーション能力があげられます。
しかし、誰もが優れたコミュニケーション能力をそなえているわけではありません。
プロのファシリテーター、即ちプロセスコンサルタントは、優れたコミュニケーション能力をそなえているでしょう。
しかし、一般の人がプロのファシリテーターのマネをしても駄目でしょう。
プロのファシリテーターは、個人の資質を最大限に生かしています。
つまり、さほど努力しないでも、何となくファシリテーターが務まってしまう人が多いのです。
本人は、自分なりに意識して、ファシリテーションのポイントを押さえているつもりでも、いざ他人に教えようとすると、属人的なノウハウなので、他人に真似できない場合が多いのです。
私は、2002年からITキャリア研究所という任意団体を設立し、IT業界の人を対象に、本書のワークショップのノウハウ、ファシリテーション・スキルを教えてきました。
一般的に、IT業界のSEやITコンサルタントは特に、コミュニケーション・スキルが苦手、といわれています。
しかし、プロジェクト・マネージャーになれば、顧客とのコミュニケーションの密度は高くなります。
プロジェクト期間中には、ワークショップを時折開催しなくてはならず、ファシリテーターを務めなくてはならないこともあるのです。
だが、ITエンジニアとしてのスキルだけを磨いてきた彼らに、いきなりファシリテーターになれ、というのは酷な話でしょう。
今日ではプロジェクト・マネージャーレベルになれば、高度なコミュニケーション能力が要求される一方で、彼らの現実のレベルと期待値とのギャップを埋める方策がなかったからです。
そこで、IT人材にも、ファシリテーションが務まるように、左脳系ファシリテーション・ノウハウを提供しているのでです。
SEやITコンサルタントが、対人力が弱いからといって、ファシリテーターになることをあきらめる必要はありません。
「対人力が弱ければ、論理的思考力を使え。」
これがシステム思考を使う左脳系ファシリテーション・ノウハウの考え方です。
私は、対人力が苦手な人でも、大局的なものの見方ができ、ファシリテーション・ノウハウが身につくように、明確な方法論に基づく左脳系ファシリテーションを推奨しています。
明確な方法論とは、MIT(マサチューセッツ工科大)のピーター.M.センゲ教授の創案したシステム思考をコア・スキルとし、さらにコンサルティングの各種方法論を活用しながら、チームとしてワークショップを企画・運営するノウハウのことです。
既に世間で知られている方法論を適宜組み合わせて活用するファシリテーション技法は、きわめて実践的なノウハウです。
これは単なるプレゼンテーションや議事進行のノウハウとも異なり、また個人の資質に頼る右脳系ファシリテーションとも異なります。
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